次に営業とは切っても切り離せないファンクションであるマーケティングを見てみる事にする。読者諸兄は「マーケティング」という言葉に何を連想しますか?
多くの人々は「市場調査」「消費者動向調査」「競合他社状況調査」等々のリサーチ系を思い浮かぶ方が多いとは思うが、本当に重要なのはそれらの調査から分析された傾向に見合う製品開発・サービス開発に結び付けたり、それらに照準を合わせたキャンペーン等を開催したりするアクションこそが重要なのである。それでは何故、そういったアクションが必要なのかと申すと、本当に欲しい人々を探しだす、見つけだす、潜在的な購買者をその気にさせる、それがマーケティングの真髄だと私は解釈する。
今まで、本書で過去の営業活動を述べてきたが、マーケティングが大きく営業職の活動に関連性を及ぼしていたとは決して言えない。
営業職は狩人のように原野の獲物を求めて走り続けただけである、マーケティングは営業とは別に好き勝手に調査をし、どうもあの原野に獲物がいるかもしれない程度の情報を営業職に与えて来たに過ぎない。勿論、全ての業界がそうであったとは言えず、一部業界を除き、十分関連していたとは言えないという事である、事実、ほとんどの企業はマーケティング部門と営業部門の組織を分けている、せいぜい本部・事業部レベルで繋がる程度である。
しかしながら、今後の営業はマーケティングと大きな連動をしないと必ずや売上は伸長できない時代に突入したと思うのである。
事実近年はマーケティング・オートメーションが注目されたり、リード情報を醸成するインサイドセールス部隊等も増加傾向である。
ここで重要となってくるのは営業職が変わる必要があるのか、マーケターの意識を変える必要があるのかであるが、勿論両方でお互いの役割分担の垣根を取り払うのが賢明なのであるが、私の今までの経験でマーケティングを長年実施しているいわゆるマーケターの多くは、営業職を兼務する事は困難である。ゆえに、営業職がマーケターのセンスを取り入れ、営業活動に活かす方が取り組易いと解釈する。
すなわち、今までのように営業職は新規案件発掘の為に知人や知人の紹介、既存の取引先や取引先の紹介、場合によっては問い合わせのあったお客様、セミナー・イベント来訪者、そういった訪問先に何度もアクセスして、商談と称する自己満足の世界に浸って、自分は頑張ってるんだと言い聞かせてきた営業職が多いのではと推察する。
勿論、それで実績を残せれば自己満足も無駄ではない、しかしながら第三ステージでは残念ながらもはや通用する手法では無い事に、最近気づかれてるんでは無いだろうか。
ここで、それを打破する為にもマーケティングの手法が重要になってくる。そもそも第一ステージの営業職はお客様を探す事が非常に容易だった為にマーケティングは営業と直結している必要性は低かったのである。
むしろ、大局的観点より営業支援的な側面で十分機能していたのである。
しかしながら、今後は先ず見込み客を探す事から営業職は苦労する訳であるが、第二ステージ後半より、この苦労は既に始まっていると推察する。
営業職は市場の変化に適応する必要があると説いたが、第二ステージ後半より適応が急務だったのである。
ここで、もう一度整理すると、第三ステージの営業職が変わらなければならない事は、「売る」という行為の他に「マーケティング」という要素を加える必要があるという事である。読者諸兄の属している企業が既にマーケティングの機能を営業の案件発掘(リード供給)として明確に捉えておられるのであれば、営業職は従来どおりの「売る」という行為に専念すれば良く、それでも結果が出ない場合は「売る」スキルが弱いという事でそこは後述する。
多くの企業では、マーケティングにおいて案件発掘(リード供給)を実践している企業はまだまだ少ないと思う、そこで営業職は会社にそういう機能強化を働きかけ、直ぐ対応してくれれば自分は「売る」に専念できるが、ほとんどの企業の場合簡単に対応は難しいと推察する。
そこで、案件発掘のマーケティング対応を自分で実施する必要な営業職に対して、次のような行動を推奨したい。
ポイント5 自分が「売る」製品・サービスの市場を把握する。
大雑把ではなく、例えば、年代・男女・法人・店舗等々。
のどの属性に訴求できるかを明確化する。
ポイント6 当該市場の競合状況を把握する。その場合、
価格・提供方式・評判・弱点等々を整理する。
ポイント7 当該市場の景況感を把握する。勿論、「売る」相手が法人の
場合と個人で観点が違うが、法人の場合は業界景況・企業業
績・財務諸表等々。個人の場合は当該個人の属している企業
団体の業界景況・企業業績・平均給与等々。
これらのポイントから明確な売り先を導き出し、見込み客を発掘する工程に入る必要があるが、ここが非常に難しい。幾つかの方法を列挙しよう。
営業職個人に割り当てられている販売費は無いと思うゆえ、どうしてもできる事に限界が出てくるが、営業活動の生産性を高めるには、販売費捻出の会社側の理解と協力を仰ぐ努力をする事を奨める。
投資対効果において「効果」が得られるのであれば、会社側も理解してくれるとは思うが、先ずは会社が理解してくれない場合の営業職のアクションを説明したい。
営業職にマーケティング要素をふまえると言っても事はそう簡単ではない。
先ず、ポイント5,6,7を実施して明確なターゲットが限定できたとする。しかしながら、多くの方々は漠然とするだろう。とは言ってもこのポイントは避けては通れない、漠然とした方々は発想を転換してみよう。先ず、過去の営業活動を実施してきた中で得られた多くの情報、とりわけ名刺情報が最初に思いつくと思われる。次に既存のお客様情報、次にイベントやセミナー等からの情報。それらの情報を整理し、その情報を分母として捉え、その中からポイント5,6,7で限定された市場を選択するのである。
そこで、導き出された情報が個人マーケティングの結果であり、あなたが営業活動を実施する見込み客なのである。
しかしながら、分母が少なく、適当な情報が見いだせなかった場合、あなたは個人マーケティングを諦め、会社に対して見込み客発掘の為の提案書を書くことを勧める。
その場合、必ず投資対効果の効果を明確にする必要を忘れずに。
いずれにしても、第三ステージの営業職は「営業」だけに専念するのではなく、営業をスムーズに進める為にも個人マーケティングが重要となってくるのである。優秀な営業職の方々はこれら工程を既に得とくされてる方が大半である。
最近ではSNSが非常に活性化している、それらをビジネス利用するのも得策である。私の知人はFaceBookにおいて自分の売っている製品の効果・評判を投稿する事により、連鎖的に拡大させ、引き合いも頂戴しているようである。
今までは比較的新規顧客開拓に焦点を当ててきたが、営業職の中には新規顧客開拓では無く、既存顧客からの追加受注営業を担っておられる方に対して記述する事とする。
企業は新規顧客が開拓できないと売上の増加に繋がらず、顧客カバレージも広がらない、しかしながら新規顧客を開拓するのは相当な労力が必要となる、その労力を費やすのなら、慣れ親しんだ既存顧客より追加オーダーを頂く方が容易である。と誰しも考えるし、またその通りである。
昔はお得意様・主要取引企業という考え方が定着しており、その関係は非常に強固な関係でもあった。
しかし昨今では景気減速の為に各社コストダウン、個人に至ってもより安い物を求める傾向が顕著となってきており、従来までの調達先は固定ではなく、流動的となりつつあるのが現実である。
その為に、営業職も既存顧客だから安心という構図はもはや描けなくなっている。
ここで重要な事は既存顧客に対しての日々のアクションである。勿論、商材によりアクションは様々であるが、ここでもマーケティングの役割は無視できない。常に顧客を大切に重要に考えている企業は顧客向けに季刊誌を発刊したり、定期的に顧客満足度調査を実施したり、メールマガジン等で情報を提供して、常に顧客に対して自社の存在をPRしている。
このような企業に属している営業職は既存顧客への追加提案もし易いと言えるが、一度商材を売却した切り、何もアクションを取っていない企業に属している営業職は正直大変である。
私も経験があるが、数年も前に購入した当時の営業より急に連絡があり、「今度新たな製品が出ました。一度お話しを聞いて頂けませんか」と言われたところで、「はい、解りました」とはならない。
一方、私が以前購入した自家用車の営業職は個人的に自筆の手紙により、車の調子は問題ありませんか? 何かあったら遠慮なく申し付け下さい。の主旨のお手紙を頂戴する。 勿論、車を買い替える時は同じ営業職に相談するつもりである。